未の話

「これより点呼を行う!」整列した未たちを前に、未が言う。「未がぁ一匹!」「未が二匹!」「未が三匹!」「未が……」

「おい、起きろ、おい!」「はっ。ここは一体……?」「お前は点呼で未を数えすぎて、もう三日も昏睡状態だったんだ。このままいけば危なかった」「そ、そうか。すまない。それで、点呼は……?」「いや、ダメだ。他にも大勢の仲間たちが点呼をしようとしたがもう三十匹以上の未が昏睡状態に……うっ」「ど、どうした!」「ふふふ……俺ももう眠くなってきた……昏睡状態に陥った未たちを数えたのは、この俺なのさ……」「お前! なんて無謀な真似を」「ふふふ……だが後悔はしてないぜ。お前ならきっと……」「おい!」「ZZZZ……」「ダメだ、もうぐっすり眠っている。すやすやと幸せそうに……」
「天よ! なぜ俺たち未は点呼を終えられないのだ! それが運命だというのなら、あまりにも、あまりにも非情じゃないか!」

未はその夜夢を見た。
「未よ」夢枕に未神が言った。
「お前たちはたしかに点呼を終えられぬ。だがそれは同時にお前たちを守るためでもあるのだ。考えてもみよ。お前たちの群れを目にした狼がどう思うか。未の群れを見つけた狼は大喜びで、ついちょっと数えてしまう。未が一匹、未が二匹、未が三匹、未が四匹……ぐぅ」
未神はもう眠っていた。

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