大江健三郎氏×中村文則氏対談(第4回大江健三郎賞公開対談)


大江健三郎賞は一年間に発行された書籍の中から、大江健三郎氏が唯一の選考者として一作品を選ぶ文学賞。第4回の今回は中村文則氏の作品『掏摸』が受賞。今回は、大江健三郎氏と中村文則氏の受賞記念対談ということになる。
『群像』5月号に大江健三郎氏の講評が掲載されていた。なるほど、詳細な分析だなぁ。こんだけ分析されて隙の出ない作品を書くという事は、難しい事だと思う。受賞作品は英語、フランス語、ドイツ語などのうちどれかの外国語に翻訳されるとのこと。
以下は断片的なメモ。


講談社社長挨拶の後、大江健三郎氏、中村文則氏登壇。
ところで、この講談社の講堂は、音響が本当に良くない。大江氏もあまり大きな声で喋る方ではないので、聞き取れない。会話が始まってまもなく、職員がピンマイクの位置を付け直し、やっと聞きやすくなった。
大江氏はフランス小説でrecits(レシ、フランス語で「物語」)と呼ばれるものと、中村氏の作品に似た風合いを見いだしたらしい。明確なテーマ、明確な文体、ある程度の短さ、といった特長を持つものがrecitsで、ル・クレジオの作品などがそれに当たる。
掏摸の作品を書く経緯について。
最初のコンセプトでは、「最初の職業は売春婦、二番目の職業は窃盗/掏摸である」という言説にヒントを得て、売春婦と掏摸の話を考えていたという。その後構想を進めるうち、掏摸に焦点を合わせたという。
主人公が掏摸でなかったら出会えない人たちだけで構成したそうだ。
中村氏曰く、物語の長さは、あの長さが自分に一番しっくりするので、意図的に調整しているわけではないのだそうだ。書き終えるとだいたい毎回同じくらいになる。原稿用紙220枚~250枚程度。
中村:掏摸には入ってはいけない領域に指を入れ、つかむという快楽がある。作品を書くに当たって友人に協力してもらい、自分の部屋で、友人のポケットに入れた財布をどうやったら抜き取れるか、練習したという。
大江氏は掏摸を子供に教える場面で、その強い信頼関係についても着目していた。
中村氏から大江氏に質問。「小説から小説へ移るのにはどんなことを?」
大江氏答えて曰く、
「小説を移動する」というのはどういう労働か? 前の小説をすっかり洗い流す/払い落とすようにして自由にならなければならない。新しい小説を構想するまでに大切な作業。私は大きな小説家の作品を読む。ドストエフスキーなど。創作ノートも読む。そうやって前の小説から自由になる過程の中で、逆に前の小説から発見し、身体の中に残っているものが見つかる。そこが新しい小説への展開につながることもある。
その後、質疑応答など。

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