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ナウシカからナウシカへ

私にとって『風の谷のナウシカ』と言えば映画の方なので、原作漫画というのを永らく読んだことがなかった。漫画の方が面白いよね、なんて意見はよく聞くんだけども。
で、かなり後になって読む機会に恵まれたんだけど、改めて、映画のスピンオフの技量に仰天した。

確かに漫画ナウシカはすごい。一言で言うと、講談社アフタヌーンコミックスかお前は。
漫画の常道を無視したストーリーテリング。独特で魅力的な世界設定。ナウシカという希有な少女を主人公に据えながら、クシャナという超現実的、実務家をダブルヒロインとして置いた配役。見事と言うほかない。

そのいいところをあらかたすっぱり全部潔く捨てて、スピンオフしたのが映画ナウシカだ。
ストーリーテリングはシンプルでわかりやすくなり、ヒロインの視点は一つに絞り、物語の焦点を原作から完全に外して変えてある。これはすごい。こんな翻案はなかなか自分が関わっては出来ない。「元の作品に思い入れがないのか!」と言いたくもなる。

細野不二彦『あどりぶシネ倶楽部』は学生の8mm映画を主題にした漫画で、その中にフィルムをいかに編集するか、という話がある。どのカットにも思い入れがあり、削りたくない。しかし全部入れたら映画としては長すぎる。
主人公の一人、道明は「輝く場所も与えられず、ただスクリーンにのせられただけのフィルムなんて不幸だと思わない?」という言葉(など)に動かされ、フィルムを削っていく。

漫画ナウシカの魅力を全部映画に突っ込んだとしても、それは「ただスクリーンにのせられただけのフィルム」にしかならないと、誰かが判断したのなら、それは英断だったと思う。
その英断あったからこそ、アニメ史上に残る名作映画になったのではなかろうか。

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