何年か前に友人のCくんと新宿の漫画喫茶に行った。彼は「今日はお互いのオススメを読もう」と宣言して、あちこち棚を探し始めた。まもなく彼は戻ってきて、「これがいい。これは名作だよ」と言って、僕にさそうあきらの漫画『神童』を読ませたのだった。
そこで僕は椅子に腰掛けてこの漫画をはじめから終わりまで読んだのだけども、結局僕はこの作品にあまり感情移入ができなくて、曖昧な感想をブツブツと呟いたものだった。友人のオススメを理解できなかったというくすぶった感情を残したまま、僕は漫画喫茶を後にした。
あれから何年経ったのだか、覚えていないんだけれども、渋谷駅の、普段通らないような銀座線へ上がる階段の壁にこのポスターを見た瞬間、これがあの『神童』だということがわかった。この映画を見たら、あの時の不完全燃焼に何かを付け加えることができるだろうか。
でも漫画の主人公の少女はあまり可愛い感じじゃなかったから、その時点でこの映画とかけ離れているような気もする。
ところであの日、僕が彼に何を読ませたんだったか、全然思い出せないんだけど。私が読ませたいものがマニアック過ぎ、見つからなくて困ったのだけは覚えている。
さそうあきら原作『神童』