再起を賭ける往年のポップ・スターと、彼が作詞の才能を見いだした女性の、微妙な恋心のゆくえを描く。いやっていうほどありふれたストーリーだけれど、2時間弱、きっちり楽しめる娯楽作品。ラブコメのご多分に漏れず、カップルで見るのがオススメ。特に、何度もケンカを乗り越えた二人で見ると、ちょっといい感じかもしれない。だって「Way Back Into Love(愛に戻る道)」がこの物語のテーマだから。
■ラブソングができるまで
◆レビュー:★★★
往年のポップ・スター、アレックス(ヒュー・グラント)に舞い込んだ復活のチャンスは、大ヒット若手女性シンガーが気に入る新曲を書き下ろすこと。期限は一週間もない。絶体絶命の彼は、鉢植えの世話をするためにやってきたソフィー(ドリュー・バリモア)に作詞の才能を見いだし、一緒に曲作りを手伝って欲しいと説得する。
どっかで見たような筋立てだなぁ、と思ったら、『あなたにも書ける恋愛小説』とかなんかいう映画を先日見たばっかりなんだった。悩めるアーティストが、ひょんなことで知り合った女性にインスピレーションを感じ、活路を見いだす……という筋立ては、こうやって骨組みだけにしちゃうと身も蓋もなく同じで、要するにミューズ(芸術の女神)神話の一類型に過ぎないってことらしい。
でも、性別を逆にして「悩める女性を主人公に、男性がインスピレーションを与える」というのだとどうもしっくり来ないんだよね。やっぱ男性は理屈っぽくて、女性はインスピレーションが優れている、っていうのが世間並みのイメージなのかな。ミューズはあくまでも女神ってことか。ギリシア人はたしかにバカではなかった。
ヒュー・グラントはどうだか知らないけれど、ドリュー・バリモアは『グーニーズ』子役としてヒットした後(←訂正:『E.T.』の子役が正しいみたい)、『チャーリーズ・エンジェル』で復活を遂げるまで、割と酷い生活を送っていたとか。そういう意味では、過去の名声を引きずって生きる辛さは、ヒュー・グラントよりドリュー・バリモアの方が身にしみてわかっているのかもしれないね。
アレックスがピアノで歌うシーンはなかなか良かった。歌詞がまた心憎いんだ。原詞の方を知りたかったんだけど、パンフレットには訳詞の方が掲載されていて、ちょっと残念。
歌が完成したらこの映画終わりかと思っていたんだけど、そんなに単純なシナリオではなくて、その後もまだまだ紆余曲折が続く辺り、ちゃんと話を練ってあるという感じがした。伏線もきっちり使い切っているし、なかなかよくできている。カップル映画としては、普通にオススメですよ。
■ラブソングができるまで(2007年/104分)
◆出演
ヒュー・グラント 、ドリュー・バリモア 、ブラッド・ギャレット 、クリステン・ジョンストン 、キャンベル・スコット 、ヘイリー・ベネット