破天荒で奔放でどこまでも自分勝手なゆりと、黒人で家庭的でゆりに振り回されながらもつい尽くしちゃうロバート。二人の恋の顛末を、いくつかのエピソードに分けて連作短編的に仕上げている。最後まで読めばそれなりに味わいがあるけれど、一作だけ読んでも「なんじゃこりゃ」と引き込まれてしまうおかしさがある。
ちなみに、初・山田詠美だったりとかする。
超・めちゃくちゃで自分勝手なゆりの自堕落な生活をユーモラスに描いていて、笑っちゃう面白さ。そんなゆりに一生懸命尽くすロバートもロバートで、まぁちょっと前に流行った言葉で「バカップル」という感じだけれど、でもそこここに真実の愛をかいま見ることもできて、面白い。
あとがきによると、山田詠美自身もダグラス氏という外国出身の人と結婚しているらしい。二人を知る人からはこの『ラビット病』は「初・自伝的小説?」と言われているとかいないとか。ま、さすがにフィクションで誇張してあるとは思うけれど、いくつかは実体験に基づいているのかなぁ、と勘ぐりたくもなる。
読み終わるまで2時間くらい。短編集だし、読みやすくてさっと読める。
実はこの本、恋人に借りて読んだ。どうも彼女は、この本がよほどお気に入りらしい。これまで彼女から聞いたセリフのいくつかは、この本が出典だったということに気がついてびっくりしたよ。
『ラビット病』山田詠美