著者の吉越氏はトリンプという会社で19期連続増収を達成し、しかも残業ゼロという状況を達成している人物。この本は、文体からして口述筆記なのではないかという気がする。語り口調だが本人の人柄というか、キャラクターがよく表現されている。非常に理知的なカリスマなのだろうと思う。
本人がロジカルシンキングを標榜しているにもかかわらず、結果的にはこの本は根性論になってしまっている。というのも、気合いの部分だけを紹介し、具体的な方法論は割愛してしまっているからだ。「残業は悪だ。絶対になくさなければならない」では一体どうやって、となると「締め切りを強制して仕事をガンガン押し込む」「必死でやれば今の5倍のパフォーマンスは出せる」というのだから、これはしんどい。「君たちはできる子なんだから、今の5倍仕事がこなせる。そうすれば残業はしなくていい」という論理だ。
実際にはそこから先の「どうやって5倍仕事がこなせるか」が知りたいことなわけだが、そこはこの本では「やればできる」とすっぱり割愛されてしまっている。まあたしかに具体論は会社によっても違うし、ここにトリンプの例を載せてもあまり参考にならないかもしれない。
ただ、随所に散りばめられた発想は面白いものがたくさんある。この発想の部分を「TTP(徹底的にパク)」ればいいのだ。「残業は会社にとって弊害がある」この発想だけでも、会社に波紋を投げかけ、たくさんの課題をもたらし、改革の意欲をもたらしてくれる。そこから先、「具体的に何をするか」は、自分で考えればいい。ロジカルシンキングで。
*『「残業ゼロ」の仕事力』吉越 浩一郎
*『「残業ゼロ」の仕事力』吉越 浩一郎