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「池袋から日暮里まで」時間堂/「15 minutes made volume 8」@シアターグリーン

カミさんと、時間堂の劇を見に行った。イベント参加6団体のうちの一つ、ということだが。
15 Minutes Made Volume8 | Mrs.fictions [演劇公演紹介] ★CoRich 舞台芸術!
15分の短い公演を6団体がそれぞれに行う、短編演劇のオムニバス。3編やって10分休憩。テンポよく次々お話が降ってくるので、実にこれが気持ちよく楽ちん。話をさっくり楽しめる。デートにはこれいいかもしれない。特に割と演劇初心者の相手を演劇に誘う場合、大物に連れて行って外すとイタイわけですが、15分6本ならラクだし、当たり外れもご愛嬌。はい次、ってなテンポがいい。やる方は、これ15分とはいえ大変だと思いますけど……脚本の準備とか、練習とか、120分の公演に比べて、決して8分の1では済まないわけで。
こういう集合イベントの場合、参加団体のレベルの高さがイベントの成否を分けると思うわけですが、今回の6団体はいずれも粒が揃って面白かったです。中でも特に印象に残った3団体の感想を。


時間堂 『池袋から日暮里まで』
出演:金子久美、大川翔子、高橋浩利、黒澤世莉
小説の世界では、短編小説は「時計を作る」とか「数学の問題作成」に例えられることが多い。つまり「材料を揃え、加工し、部品を組み合わせ、時計を組み上げる」のが短編小説を作る作業であり、「構造」とか「構成」の巧みさ、面白さが重要である、という意見が強い。
もちろん、舞台芸術は小説ではないし、短編公演は短編小説ではない。にもかかわらず、今回の「15 minutes made volume8」でも、大なり小なり構造的な面白さをもった作品が多く見られた。中でも、構造的な面白さ、という意味ではこの時間堂の『池袋から日暮里まで』がダントツで面白かった。黒澤世莉氏はこういう作品に向いているんだろうなぁ、と思った。まさに「時計を組み上げる」職人的な手腕であり、「短編上等」である。
観客に与えられる前情報は、「池袋から日暮里まで」であり、それが山手線外回りの車内を差していること、だけである。そのため観客は舞台が始まると、役者の台詞から登場人物4人の関係性を推測する、という謎解きをせねばならない。これがまた、ヒントの出し方が適切で、観客は遅かれ早かれ、正解を導き出すことができる、はずだ。こうして理解された関係性が、田端の駅において、奇妙な符合を見せた時、2組の男女の織りなす対比が観客の心にえもいわれぬ感情をもたらす。同じ「池袋から日暮里まで」を往く男女の、何がこれほどまでに違いを分けてしまったのか…という切ない気持ちにさせてくれる。
また、この作品が「演劇ならでは」といった表現手法を採用していることも高く評価したい。この作品を映画にしようとしても、なかなか難しいし、おそらく構成をまったく変更する必要があるだろう。小説にすることも困難。舞台芸術ならではの表現という意味で、すごいと思う。
ちなみに、山手線で池袋~日暮里の所要時間はおよそ12~13分であり、本公演の上演時間に華麗にマッチしている点も面白い。この作品はそういった意味でもリアルな時間性を持っている。
また、3番目の作品ならではのエキストラ配役も絶妙。この作品にエキストラが登場することで、6作品すべてに通じるインターテクスチュアリティ(簡単に言うなら「相関性」「つながり」)が生まれていると思う。
◆劇団芋屋『てめぇは草食ってろ』
出演:磯矢拓麻、桑原礼佳、鈴木亮平、菅田正照
前述時間堂の感想で短編における「構造」とか「構成」の面白さを云々したが、まさに「舞台芸術は小説ではない」ということを証明するかのように、まったく異なる意味で完成度が高かったのがこの作品。この作品には特筆すべき構成などないのだが、コメディとしての完成度が異常に高い。台詞、間合い、細かい仕草や役者の演技、どれをとっても絶妙で、なんの理屈も必要なく、面白い。ストーリーとしての落ちはいまいち雑然としているが、それを差し引いてもすごく面白かった。観客を笑わせる力という意味で、ものすごいパワーを持っていると思った。演劇・喜劇の基礎力で言えば、6団体のうちで一番だと思う。
◆TOKYO PLAYERS COLLECTION 『TOKYOが始まる』
出演:黒木絵美花、佐藤祐香、富永瑞木、和知龍範
6団体の順番をどのように決めたのかはわからないのだが、この作品が最後であることは、本イベントにとって良いことだったと思う。なんといっても、後味が爽やかだ。時間堂のような「構造的面白さ」というよりはむしろ、トレンディドラマのような構成の巧みさが光った。そういう意味では映画的・映像的な作品だ。ストーリーはシンプルでわかりやすく、落ちも安心できる。タイトルコールをあえて最後に持ってきた構成もお洒落だ。「東京」という街を擬人化する表現はちょっと混喩かなぁという気はするが、演劇らしいと言えばらしい。
Twitterでは本イベントを「デートに好適」と評したのだけれど、それはこの作品の清涼感によるところが大きいと思う。

「池袋から日暮里まで」時間堂/「15 minutes made volume 8」@シアターグリーン
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