サイトアイコン 74th Heaven

光の館(No.63 越後妻有 大地の芸術祭2010.06)☆☆☆☆

20100605_154415.jpg

ジェームズ・タレルのデザインした「光の館」。大地の芸術祭の中でも屈指の話題作で、宿泊可能なアート。半年先まで土日は埋まっているというこの宿泊施設に、カミさんが根気よく予約を頼んで、ついに宿泊することに。今回の一泊旅行のメインイベント。
定員12名で、場合によっては知らない人との同宿もありうるというドキドキ感。確実を期するなら、身内12人で宿泊を申し込むのが一番安心して泊まれる。ただしタレルの提案する「プログラム」は非常に緩慢なので、アートに興味がある人を選ぶ方が落ち着いて楽しめる。あるいは、もうアートなんか忘れて飲み食いする「花より団子」で割り切るならそれも自由だ。1階は寝る部屋、キッチン近くは呑み騒ぐ部屋、大部屋はアートを見る部屋と分けるといいかもしれない。



■宿泊者のスケジュール

16時にチェックイン可能で、それまでは見学者に開放されているため、荷物を置くことはできないいたい。我々もちょっと早くに着いてしまったので、駐車場に車だけ置かせてもらって、近くのアートスポットを散策していた。
夕刻(日没に合わせて時間は変わる)と日の出前(日の出に合わせて時間は変わる)に、ジェームズ・タレルがデザインした「プログラム」を見ることができる。
お風呂は宿泊の間ずっと入浴可能。タオル、バスタオルはあるけれど、持ち込むと少し値引きしてもらえる。夜は浴室は真っ暗になってしまうので、なんも見えない。ほんと見えない。身体洗うとか無理無理無理だから。明るいうちに一度入って身体を洗い、夜はジェームズ・タレルデザインの鑑賞のためにちょいと浸かる、という二度風呂プランがオススメ。このお風呂はたぶん宿泊者だけが見られる特権の一つなので、是非見た方がいい。ただし、段差もあるし、足下には十分気をつけて。
朝は10時までにチェックアウト。チェックアウト時刻の15分前にスタッフが来て手続きを行う。記念撮影とか撮ってくれるけれど、あちこちで撮っているとけっこう時間がかかるので、その時間は見積もっておいた方がいい。なんだかんだで我々は30分くらいかけてここを離れた気がする。それは大げさか。

■間取り、構造、デザイン

公式サイトに平面図があり、平面図上にマウスポインタを当てると写真も見ることができる。
館の外には入り口に続く長い上り階段があり、2階から中に入る「1stフロア→グラウンドフロア」方式(当地の豪雪に合わせた仕様らしい)。
2階の部屋の一つは大部屋(12.5畳)。この「光の館」のメインフィーチャーで、天窓が開閉できるようになっている。もう一つの部屋は寝部屋(6畳)で、ふすまによって廊下と仕切られている。キッチンもこの寝部屋の横にある。
1階(グラウンドフロア)にも一つ部屋があり、これはガーデンルームと呼ばれているらしい。2階の部屋より少し広い(8畳)。浴場、トイレも1階。ただし2つあるトイレはその入り口が脱衣場と事実上一体化しており、誰かがお風呂に入っているとトイレが使いにくいという罠。特に女性が入浴する時には、注意が必要という気がする。出口別にしてくれたらよかったのに…。その辺がアメリカ人のセンスってことなんだろうか。



デザイン面から言うと、大部屋の明るさが非常に際立つ設計になっている。
通常の部屋は間接照明だけで、昼でもそう明るくはない。天井も木目調。しかし大部屋は天井が白塗りで、少しの光でもキレイに反射し、まばゆいばかり。我々が到着した時には薄曇りだったけれど、それでも天窓を開けるとさんさんと光が降り注いで「外はこんなにも明るいのか!」と思うほど。他の部屋との対比が素直に光の恵みを感じさせる。さすが知覚の魔術師タレルという感じ。
なお、少しでも雨が降ったらすぐ天井を全閉してください、とのこと。少しでも開けておくとそこから水分がしたたり落ちて真っ白な天井にシミが出来てしまうのだそうだ。修復に大変お金がかかるとか。
天井の開閉は壁のパネルで自分たちでできるが、開閉する時には大きな音でブザーが鳴り続けるので、夜はけっこう気を遣う気がする。気を遣ったところで開閉せざるを得ないのだが。
2階テラスの電球は一度消すとなかなか再点灯しないので、いじってはいけない、みたい。

■日没・日出のプログラム






ジェームズ・タレルの提案する「プログラム」は、日の出と日の入りに合わせて時間が変わる。入館時にスタッフがプログラムの開始時間を書いた紙をくれるので、それに合わせて待つことになる。(我々が泊まった6月上旬の場合、ほぼ19時~20時と03時~04時だった)。といっても、このプログラム、明確に何かがどうにか始まる、という種類のものではない。
一言で言うなら、それは、「空を見る」ということに尽きる。ただそれだけの、なんということもないアートだ。
しかしタレルの計算によって四角く切り取られた空は、普段見る空とはまた違って、不思議なほど単一の、鮮やかな色を見せる。それはつまり、補色の作用のようだ(義妹の意見)。白天井がやや黄色みがかった照明で明るく照らされる中、空は青から藍色、そして黒へと変化していく。あるいは逆に黒から青へ。その変化がより際立つように、照明が計算されている(といっても、照明もずっと均一で変化していないと思う)。
日没のプログラム終了後、スタッフの人が「たくさん星が出ていますね」と声をかけてくれて困惑した。タレルの天窓から見た空には、星なんて一つ二つしかなかった。天井の照明(タレル・ライト)を落として暗くしてみると、なんと、今の今までまんじりともせず見つめていた漆黒の空には、満天の星がちりばめられていたのだった。いつの間にか、雲はきれいさっぱり晴れていた。でもタレル・ライトが、夜の闇をより黒く見せていたので、我々には星が少しも見えなかったのだ。
青いものをより青く、黒いものをより黒く見せるタレルの魔術は、たしかに素晴らしい。混じりけのない空の色を、あなたは見たことがあるだろうか?
☆☆☆☆☆ (感銘を受けた)

■Spec

作品番号 : 63
ジェームズ・タレル【アメリカ】
制作年:2000年
見学料金:中学生以上 500円、小学生 250円
宿泊料金:施設利用料20,000円+1人当り利用料3,000円(小学生1,500円、小学生未満無料)
会議等利用料金:10,000円/3時間

■関連URL

House of Light
光の館 – 大地の芸術祭の里

■場所

より大きな地図で 越後妻有旅行:ポイントマップ を表示

光の館(No.63 越後妻有 大地の芸術祭2010.06)☆☆☆☆
モバイルバージョンを終了