友達に「音楽をたくさん知っているのはなぜ?」と訊かれた。
とりたてて、たくさん聞いているという意識はない。んだけども、CD400枚持っているというのは、どうやら平均より多いみたいで。一応音楽サークルにいたから……というのはたぶん一つの回答なんだけれど、でも、音楽サークルで自分の趣味が広がったという感覚もない。あの頃は、むしろ独自路線を突っ走っていたからなぁ。
たぶん、単純に、所有欲が人より強かったということなんだろう。つまり、いいと思った音楽を録音したからだ。録音するという技術が身近にあった、ということもある。
宮崎にいた高校時代、ラジオをよく聞いていた。なんでラジオを聞くようになったのかは、まぁ時代の趨勢としか言いようがない。たしか中学の末期に渡辺美里の歌がちょっといい感じで、たまたま渡辺美里のラジオ番組を聞いたらそこで流れた中島みゆきがいい感じで、ちょうど中島みゆきの番組が始まるところで……というような流れだっただろうか。いや、中島みゆきの番組が始まるのは、もっと後だったかな。でも、好きなミュージシャンがやってる番組をよく聴いていた。それ以外の番組も、よく番組表を確認して、自分の好きなミュージシャンの曲がかかりそうだ、と察知すると聞くようにしていた。
しかもラジオを聞いたら録音して、気に入った曲だけカセットテープに編集するという手間をおかしていた。高校生って、ヒマなんだなぁ!
兄が当時からオーディオに結構詳しく、その手のダビング機材が身近にあったことが幸いしたのだろう。だから、当時の音楽のインプットは、もっぱらラジオだった。テレビの歌謡曲にはあまり興味を持てなかったし、どのみち、宮崎には民放2局しかないんだよ。
高校時代には、自分で決めた「Out Of Order」というタイトルのカセットシリーズがあった。「故障中」という意味だが、「順不同」という意味にもとれる。ラジオから録音した曲を集めたカセットの総称で、何巻にもわたって、この「Out Of Order」というカセットに私の気に入った音楽は蓄積されていった。その中から、特に気に入ったものとか、たまたま中古CD屋で見つけた幸運な音楽は、CDアルバムとして入手した。
だから、たぶんラジオを聞いて一過性で忘れてしまうということが、あまりなかったんだろう。聞いた曲は、カセットに録音する時にタイトルとバンド名を書き記す。そうしておけば、何年経っても、CDを探すことができるし、入手することができる。――私的複製にだって、いい面があるってことさ。規制するばっかりがメリットじゃないと思うんだけど。
気がつくと私のCDは400枚になっていた。最近はあまり増えていない。なんつーか、やっぱ年を取ると新しいものに感度が低くなるんだろうか。それとも、さすがにラジオを聞いて、録音・編集なんてヒマがなくなったから?
ちなみに400枚と言っても全然聞かないものも含まれているし、音楽が好きな人の中で、とりたてて多いというわけではないと思う。音楽関係でも仕事をしているジャーナリストの知り合いに聞いたら「2000枚を超えた辺りから数えてない」だそうだ。