以下の文章は、「パラサイヨ大人の運動会」撮影担当の一人の想像に基づくフィクションです。
「大人の運動会?」
中規模の企業で営業職に就いている山田(30代男性)は自宅でぼんやりテレビを見ていた。
テレビを見ていると、「大人の運動会」という単語が飛び込んできた。何? 何だって?
テレビの中では100人くらいの大人が、色とりどりのTシャツを来て、大玉を頭上で運んだり、障害競争で飛んだり跳ねたりして勝負を競っていた。学生時代サッカー部に所属していた田中は、最近身体を動かす機会がなく、なまった身体が少々気になっていたところだった。
なんとなく気になってwebで検索をしてみると、「大人の運動会」というイベントをしている団体はいくつかあった。先ほど見たのは「PARASAIYO(パラサイヨ)」というイベント団体が開催しているものらしい。運動会については公式サイトのイベント紹介のほか、「パラサイヨ大人の運動会 弾けろ!日本ノオトナタチ!」というFacebookのページもあった。総勢200人でやるらしい。例年秋開催で、今年は10/18(日)。
写真を見ていたら、なんだか身体を動かしたくなってきた。「サッカー部の連中と一緒に申し込んでみるかな……」
申込みから前日まで
サッカー部仲間に声をかけてみたが、なかなかみんな都合が付かず、石塚と、女子サッカーの佐藤が一緒に行くことになった。せっかくなので会社のメンバーにも声をかけてみたら、昔運動部の女子マネをしていたという鈴木が来てくれるという。
申し込みサイトから申し込みをして、参加費用は事前に振り込んだ。アヤシイ団体だったらどうしよう……と思わないでもないが、テレビで紹介されるくらいだし、朝日新聞で紹介されたこともあるらしいし、日経でも紹介されていたらしいし、まぁ大丈夫かな、と考えることにした。
振込後すぐに返信が来なかったので少々不安になったが、2、3日で返信が来た。当日まで、何回かに分けて案内が届く。持ち物は、着替えとかタオルとか。スパイクは禁止らしい。石塚や佐藤、鈴木にも連絡して、待ち合わせをしてから行くことにした。会場は毎年変わっているが、今年は光が丘陸上競技場らしい。
06:30 起床
当日、朝6時半に目覚ましが鳴る。普段会社に行くよりも少し早い。眠い目をこすりながら目覚ましを止め、顔を洗って着替える。昨日のうちにまとめておいたリュックには、スポーツウェアと着替えとタオル。スニーカーは自宅からはいていくことにする。念のため、上に羽織る防寒着(予報では夕方冷える)、替えの靴下、100均のレジャーシートも持っていくことにする(結局レジャーシートは使わなかった)。
待ち合わせは、新宿に8:30。家を7:30に出れば間に合うだろう。たぶん石塚あたりが遅刻してくるのは計画に折り込み済みだ。
8:30 待ち合わせ
新宿の大江戸線の改札の前へ到着すると、意外にも石塚が先に待っていた。
「なんかもー、わくわくして目が覚めちゃったんだよ」
石塚は意外とやる気らしい。ほどなく佐藤、鈴木もやってきた。みんなで大江戸線に向かって歩き出す。
09:20 会場到着、受付
光が丘で降りるのは初めてだ。駅を出てどちらに歩けばいいのかわからずうろうろしていたが、佐藤が地図を発見。どうやら、上に遊歩道があって、それが公園に続いているようだ。
そこからさらに5分ほど歩いて、陸上競技場にたどり着いた。テントが並んで立っているのが見える。スタッフが何人か、準備をしているようだ。
テントに近づくと、椅子に座った女性が笑顔で挨拶してきた。
「こんにちはー! 受付はこちらです」「お名前もらっていいですか?」
名前を告げると、真っ赤なTシャツを渡された。
「着替えは後ろのテントの中でどうぞ。皆さんは赤チームです」
男女別のテントが用意されている。そそくさとウェアに着替え、その上からTシャツを羽織る。
テントを出ると、石塚や佐藤が待っていた。同じ赤い服を着ているというだけで、チームっぽい感じがしてくる
鈴木は何かシューシューと自分の手足にスプレーしている。こちらの視線に気づくと、笑顔で「虫除けスプレー持って来たけど、要る?」とスプレーを振って見せた。そういえばここらは藪が多いのでヤブ蚊も多そうだ。なるほど気が利いている。さすが元マネージャー。
指示された赤チームの集合場所には、既に何人か、赤いTシャツを着た人たちがいた。
「こんにちは! 今日、赤チームリーダーのリナです。名前、書いて下さいね。今日一日のニックネームで」
ガムテープと黒マジックを手渡された。でっかく「ヤマ」と書いて横っ腹の辺りに貼り付けておく。他にも三々五々、赤いTシャツを着た人たちが集まってきた。1チームは20人強。中には小学生もいる。
開会の10時が近づくと、リーダーが全員を集めて自己紹介を始めた。
「選手入場のBGMは爆風スランプのRunnerなので、みんなノリノリでついてきて下さいね。それじゃあ、今日一日、みんなで盛り上がりましょう!」
円陣を組んで気勢を上げる。よーし、盛り上がってきたぞー!
10:10 選手入場、開会式
「東軍の選手入場です!」マイクのアナウンスに合わせて、爆風スランプの「Runner」がかかる。全員でわいわい騒ぎながら、でもちょっとだらだらとトラック入場。整列した。
東軍大将は、なぜか馬のかぶり物をかぶって(馬面ということらしい)、騎馬戦のように担がれて入場してきた。東軍全体が歓声で出迎える。
大会実行委員長の挨拶。「みなさんは見た目以上に老けてます」(会場苦笑)「準備運動をしっかりして、怪我のないように」とのこと。大会としては怪我に対する保険をかけているので、もし怪我した人は後日でも遠慮無く申し出て欲しい、とも。怪我しないに越したことはないけれど、大会としてきちんとそこに手をかけてくれているのは安心感がある。
このほか、東軍西軍大将の宣誓などもあった。
10:25準備体操(エアロビクス)
開会式が終わると、エアロビクスのプロインストラクターが登場し、全員で準備体操。エアロビクスなんて初めてやったが意外ときつい(汗) 指示に合わせて身体を動かすうちに、だんだん息があがってくる。「あれ、みなさんもう息があがってませんか~大丈夫ですかー?」とインストラクターに挑発されても、反論できない。 やれやれ。
10:30 第一競技 5秒でドン(旧称)
準備体操(エアロビ)が終わると、そのまま第一競技が始まった。
基本的には「司会の指示通りにできるか」というチャレンジもの。最初のお題は「今日のニックネームの順番に並びかえて下さい!」というものだった。あわてて全員が右往左往する。
俺はヤマだからだいぶ後ろの方。石塚はずーっと前の方だ。鈴木は佐藤より前かと思ったけれど、ニックネームだからか、真ん中の辺りにいる。チームリーダーのリナが俺の後ろだ。「できたら座って、座って!」と彼女が言うので慌ててしゃがみ込んだ。
全員が座ると副審のフラッグが上がる。
この後も、似たような競技がいくつか続いた。
10:40 第二競技 男ならべ
これも最初の競技と似たように並び替える競技だったけれど、今度は俺はやることがなかった。女子が男を並べ変える競技だから、男子は自発的に動いてはいけないのだ。
全員が目を閉じた状態で、男子の首に文字がかけられており、司会の号令で全員が目を開ける。文字を正解の通りに並べ変える……ために、女子が総出で男子を押したり引っ張ったりするという、なにか嬉し恥ずかしい競技だ。
最初のお題は「も」がやたらたくさん……正解は「すもももももももものうち」だった。俺は「す」だったので最前列までリナに引っ張っていかれた。
その後も何問か出たが、赤チームはチームワークがよく、けっこう順調に正解した。
キッズラン
10:50 第三競技 チャリティ・ラン女子1,000m
任意参加の女子1000m走。参加者はいくらでもいいけど募金してから参加、という不思議なルールだ。でもまぁマラソン大会でも参加費用払って走るし、似たようなもんか。参加すると協賛企業の景品がもらえるらしい。優勝者にはオークリーのサングラス。そうでない人にも、数量に限りはあるが、化粧品サンプルなどがもらえる模様。
参加する人いんのかよ、と思ったら、大半の女子が参加していて目を丸くした。
佐藤や鈴木もやるらしい。「え、やるの」と言ったら「せっかくだから」「タイム久しぶりに測りたいし」と涼しい顔をしている。
時間計測は正確ではないけれど、ストップウォッチ読み上げなのでよく聞いていればだいたいの目安にはなる。鈴木は意外に足が速く、佐藤よりだいぶ早くゴール。それでも女子の中では中の上くらいで、「みんなはやーい!」と目を丸くしていた。緑チームのリーダーが1位だったようだ。
11:00 第四競技 障害物競走
男女ペアの障害物競走。知りあいと組もうとしたが、せっかくだから、と言われてバラバラに。初めての人と一緒にやるのはなんだか気恥ずかしい。俺はリナと組んでトップランナーで出発することになった。最初にルール説明がある。ストッキングの輪っかみたいなものをバトンにして、馬跳び、ボールを背中に挟んで横歩き、お題に沿った絵を描いてチームメイトに当ててもらったら折り返し、二人三脚でボールのあった場所まで戻って……などなど、チーム全員が走り終わるまでのタイムを競う。単純なのだが聞いているうちに頭がこんがらがってくる。まぁなんとかなるか、とスタートラインに立った。
意外と馬跳びが難しい。リナに頭を蹴られた(汗) 頭を下げておかないと。
俺が描いた絵は結局わかってもらえず、リナがさらさらっと描いた絵は「うなぎ」と一発で正解が出た。俺の描いたのと何が違うんだよー。
結局、赤チームは障害レースで1位。チーム全員が超盛り上がる。大会自体は東軍と西軍の勝負、ということになっているけれど、当然チームごとの得点も集計されている。よーし、目指せトップ優勝だ!
12:00 第五競技 チャリティ・ラン男子1,000m
出るつもりはさらさらなかったんだけども、先ほどあんなに女子が走っていたのを見てしまったし、佐藤と鈴木も「当然出るよね」的な目でこちらを見ている。500円を募金ボックスに入れて走ることにした。
タイムは……佐藤より遅い。
「なーんだ」「遅いじゃーん」「まじめに走ってないね」と石塚にまでコケにされる。ぐぐぐ……高校の頃は石塚の方が遅かったのに……。
12:30 昼休み
お弁当は、普通の仕出し弁当。ちょっと量が足りないかなー、と思ったら鈴木が「みんなの分もあるよ」とおにぎりをくれた。おおー。さすがマネージャー、気が利く。「でもあんまり食べると午後が大変だよ」……そういえばそうだな。
13:00第六競技 大玉転がし
紅白のゴムボールを頭上で送り、コーンポストをぐるりと回ってスタート地点に戻ってくる。ボールだけではなく、全チームメンバーがゴールラインを正しく通過しないとゴールしたと見なされないので、最後まで気を抜けない。
やってみると、これが難しいし、超走らされる。ボールが弾んで思った通りにコントロールできないし、ボールを追いかけて右に左に全力疾走なのだ。
第一回戦はまったく同着。3回勝負して、結局この勝負は西軍に取られた。悔しい。
第七競技 戦国玉入れ
ルールの説明があったが、よくわからなかった(汗) 幸い、赤チームは2回目の出場ということだったので、1回目はじっくり見ることにした。同じ東軍の青チームを応援する。
4つのチームがグラウンドの中央にあるテニスボールを奪い合って、自陣のかご(ポリバケツ)に入れるのが基本のルールだ。試合開始と同時に全力で中央に行き、自陣にボールを投げて供給する。
自陣は自陣で、集まってきたボールをどんどんポリバケツに投げ入れる必要がある。意外とこれが入らない。ボールを入手するのに時間をかけすぎると、結局ポリバケツに入れる時間がなくなってしまう。時間配分、人手の配分が勝負の鍵らしい。
赤チームは2回戦で好成績を収め、最終戦も戦った。結果は重量測定で後ほど発表ということだったが、さて他チームはどのくらい入れたのかな?
第八(最終)競技 選抜リレー
最後に待ち構えているのが、選抜リレー。100mの走者と200mの走者で、全8チームが戦う。司会の得点発表によれば、東軍西軍は西軍優勢。しかし僅差なので、リレーの結果次第では十分逆転がありうるとのこと。よーし、俺は応援するか。石塚の方が足が速いし(←ビミョウに根に持っている)。
結局石塚と鈴木がリレーの選手に選ばれた。選手たちは円陣を組んで気勢を上げる。
みんなに盛大に送り出されていった。
号令と共に競技開始。各チームとも精鋭メンバーなので、さすが早い。
途中でバトンを落としてしまうチームもあったり、抜きつ抜かれつの接戦だったが、最終的には緑チームがぶっちぎりで1位。赤チームは3位と健闘した。
全員でリレーの選手たちを労い、チーム全員で集合写真撮影。後は、閉会式の成績発表を待つばかりだ。
閉会式 成績発表
整理体操の後、閉会式。
開会式と同じように各チームが整列し、司会の発表に耳を傾ける。大会の進行に貢献した「マナー賞」は紫チームが受賞。
各チームの順位が発表されていく中、赤チームは……2位!惜しい!とはいえ、全員で跳び上がって喜んだ。
チームで最高得点は白チーム。そして東西対決の行方は、西軍の勝利となった。
あちゃー、負けた、負けたか。全員で西軍に拍手を送る。
最後に、運動会に参加した全員で集合写真。楽しかった-。疲れたけど……明日仕事かぁ。
打ち上げ
大会終了後、またテントで着替えて出てくると、リナに「打ち上げにおいでよ!」と誘われた。これから運動会参加者全員で打ち上げをするらしい。石塚や佐藤が行きたい!というので、鈴木もついてきた。近くの駅の居酒屋へ。
打ち上げでは、スタッフも、副審も、司会も、東軍も西軍もいて、最初はチームごとに集まって乾杯。話していると意外と職場が近い子とか、業種の近い人なんかもいて、名刺交換までしてしまった。今度みんなで飲みに行こうよ、なんて話も出て、LINEも交換した。
22:00 就寝
思いのほか酔っ払って帰宅。運動の後で飲んだので普段より回ったみたい。なんとか風呂には入ったものの、布団に倒れ込むようにバタン、と寝てしまった。しばらくあちこちの筋肉痛が続きそうだ。明日出勤したら、鈴木にも訊いてみよう……。
※以上の文章は、「パラサイヨ大人の運動会」撮影担当の一人の想像に基づくフィクションです。
関連URL
パラサイヨ
イベント紹介@パラサイヨ公式web
パラサイヨ大人の運動会 弾けろ!日本ノオトナタチ!(Facebookページ)
[EOF]