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『桜坂消防隊』(アイレムソフトウェアエンジニアリング)


桜坂消防隊
 地味だが割といいソフトを放つ印象のあるアイレムの『桜坂消防隊』。良質の消防アクションだ。ちょっとボリュームが物足りなかったり、はしご車とか消火ロボとかアクセントになるはずのポイントがかえってダルダルだったりとアラもある。でも基本のシステムはよくできているので、結構楽しめる。


 基本になるのは、もちろん消火活動。主人公を操作して火災現場を歩き回り、ホースやインパルス(携帯消火器)などの装備で火を消してまわる。自分の足で現場を歩き回る点を除くと、ゲームセンターにあったセガの消火ゲームとほぼ変わりない。だがこのソフトでは二つの要素を加えてさらにシステムを進化させている。

 一つは、リアルタイムで仲間を指揮する要素だ。主人公以外の仲間は、状況によって1~3人が現場に同行する。主人公は、それぞれの隊員に「どこへ移動するか」を指示することができる。指示を受けた隊員は周囲の炎を消火しつつ移動し、目的地の炎を鎮圧、周囲の要救助者を検索する。また、スイッチなど特定の仕掛けを動かすこともできる。
 基本的には手分けして現場を消火した方が効率がいいのだが、時折、2人がかりで協力しないと動かせない障害物があったり、要救助者を案内するため、人手が必要になったりする。「この部屋を嶋さんに任せておいて、朝倉はこっちの救助者を救助。土井と自分でこの仕掛けを動かして……」といった戦略をあれこれ考えるのがこのゲームの醍醐味だ。各隊員には足の速さや力の強さなど個性があり、個性を活かした配置も重要になる。

 もう一つの要素は、遺留品と鑑定である。このゲーム中に登場する7つの現場はすべて、連続放火犯による犯行。現場に残っている遺留品を発見し、鑑定を進めるとその犯人をみつけることができる。ただし、火災が進行すると遺留品が焼失してしまうことがあるため、遺留品集めには効率のよい消火が欠かせない。また、発見した遺留品のうち、鑑識に送れる遺留品は3つだけ。そのため、事件性が高いと思われる遺留品を選ぶ選定眼も必要になる。

 問題点の一つは、はしご車と消火ロボットの存在だろう。いくつかの現場でははしご車や消火ロボット(遠隔操作の消火用車両)を使って消火にあたるシーンが用意されている。しかし、徒歩の場面に比べると面白さは数段劣る。消防署の活躍を描く上で欠かせない部分なのかもしれないが、純粋なゲームとして考えれば、はしご車や消火ロボットは蛇足だったと言えるだろう。もしかすると消防署の協力を得るためにこれらのギミックを導入することが必要だったのではないか……とかそういう勘ぐりもしてしまう。それくらいこれらのシーンはかったるい。

 もう一つは、ボリュームの物足りなさ。面白いゲームだけに、もっとたくさんの現場で遊んでみたい気持ちがむくむくと盛り上がってくる。7つでは全然足りない。だがまぁゲームの制作費の問題からすれば、この辺りが限界なのかもしれない。

 ボリュームに関連して問題なのが、次回作があまり望めない点だ。一見すると汎用性の高いシステムのように見えるが、実際にはストーリーと密接に関連している部分があり、消防現場を舞台にこのシステムに違和感なく当てはまるストーリーを作るのは難しい。そのため、佳作であるにもかかわらず、『桜坂消防隊2』が発売される可能性はあまり高くないように思われる。普通、ボリュームの足りない作品では「今作の内容に上乗せしてボリュームアップした次回作を」となるのが定番だが、それもこのゲームでは期待薄ということになる。そうした点は残念だ。まぁそれもこれもよくできたゆえの悩みということになるが。
 解決策として考えられるのは、ストーリーを排除した、純粋なアクションゲームとして外伝的な作品を作ることだ。遺留品集めや救助作業を含め、効率の良い消火活動を競うゲームとして売り出す。ストーリー仕立ての面白みは減ってしまうが、それでも十分、魅力的なゲームとして成立しそうな気がする。

 荒削りな部分もあるが、アクション要素がよく出来ており、その他の部分にも工夫が見られる。採点すれば70点は堅いだろう。割と満足でした。無理かもしんないけど次回作に期待。

『桜坂消防隊』(アイレムソフトウェアエンジニアリング)
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