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『オーデュボンの祈り』伊坂幸太郎

『オーデュボンの祈り』伊坂幸太郎、新潮文庫
2006/03/30、友人まつ。氏より推薦を受ける。私にしては珍しく、読んでみることにした。
2006/05/30読了。
作家としてこういう言われ方をするのが幸せかどうかわからないが、かなり村上春樹っぽくて面白かった。5時間ほどぶっ続けで読み通してしまった。


シュールでリアリティのない舞台、そこで起きる奇妙な事件。否応なくそこに巻き込まれていく主人公。
一方で、時おり暴力的な描写が挿入される点や、終盤には謎の大半が解決される点など、ミステリ文学的・大衆文学的な要素もいくつか感じた。
と思ったら、これ、新潮ミステリー倶楽部賞の受賞作なのね。普通にハルキ的な文学作品としても、面白いと思う。

作家自身がこのリアリティのない設定に自信ないのか、所々に言い訳がましい記述が見え隠れする。「こんなファンタジー、あり得ませんよね」的な。同様の言い訳っぽい表現が『陽気なギャングが地球を回す』にもあるような気がする。作品に没頭したい時に変な言い訳が入ると、ちょっと気に障る(苦笑)

ちょっと作品を読んだだけで作家の特徴をどうこう言うことはできないし、だいたい村上春樹だって数えるくらいしか読んでないのだが、往々にして問題の解決を見ない村上春樹作品に比べると、この作品の読後感はやや爽やかだ。カタルシスがある。その辺もミステリ文学的・大衆文学的なのかもしれない。

文学性とエンターテイメント性のバランスの良さは、非常に期待の持てる作家だと思う。

『オーデュボンの祈り』伊坂幸太郎
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