英語を学習する上で、根本となるものは何だろう? 考えたことがありますか?
「それは単語力なんですよ」と言うとこれはいかにも当たり前のお説教のようだけれど、じゃあ一歩進めて「なぜ単語力が英語学習の根本なのか」を理詰めで説明できる人は、そう、多くはいないんじゃないかと思う。
高校時代、友人の一人が文法のルールを一人で考えていて、当時彼の理論は穴だらけだったので、みんなで一笑に付したものだけれど、都会の予備校に入ったら、彼が基本的には正しかったことがわかった。実は彼は、五文型のことを、もうちょっと体系的に理解しようとしていたのだった。――信じられないだろうけれど、田舎の高校じゃ、(進学校と呼ばれているトコでさえ!)そんなことも教えてくれないのだよ。あの時、彼の疑問に答えられる英語教師がいてくれたら! しかし、今はそんなことを言っても仕方がない。
その後、私は予備校で勉強し、さらに英語学をかじり、英語を理解するための論理的な構造を理解した、と思っている。英語の構造じゃないぜ。英文を理解するための論理構造。と抽象的に書いてもわかるめぇ。例を挙げよう。
I have a pen.
この文章を理解できるだろうか。わかる、というなら、じゃあ次の質問。
英語をまったく理解できない人間が、この文章を理解するには、どのようなプロセスが必要だろうか?
ある種の教師は、これに似た文章を大量につめ込んで、「なんとなく」理解させる。「似たものを見たことがある」から理解できる、という仕組みだ。たとえばI have two pens.であったり、I have a knife.であったり、こうした英文と訳文の組み合わせを繰り返すことで「こういう場合は、こう訳す」みたいなものを帰納的に体得させようとする。
これはこれで、英語学習のあり方としてアリだ。特に、ルールとか文法とか覚えたくない大ざっぱな人には有効かもね。
でも、厳密に論理的にやるとしたら、どうなんだろう?
もし、ある人間(あるいはロボットでもいい)が「I have a pen.」という英文が表現している事象――この文章の話者はペンを所有している――を理解するには、以下のようなプロセスを踏むハズだ――と、私は考えた。
- すべての単語の品詞を明らかにする。
e.g)「I have a pen.」の場合、Iが代名詞であること、aが冠詞であることは明白。これらは機能語(→語 – Wikipedia)なので、前提として理解していないと英語を理解できない。penはおそらく名詞。haveは動詞であろう、と当たりをつける。「a pen」はこの時点で名詞句となり、一つの名詞として扱う。
この仮定が以下のプロセスで間違っていたと判断されたら、1に戻って何度でもやりなおす。 - 文章の主となる述語を選定する
疑問文や代名詞などが入り組んでいる場合、このプロセスが重要になる。この文章は代名詞主格で始まっているので主語(S)確定。動詞になれる単語もhaveしかないので、これが文章全体の述語(PあるいはV)とわかる。 - 動詞のとりうる文型を選択肢として理解する。
英語の五文型を確定させるのは、動詞の働きによる。動詞によって、選択しうる文型が決まっているわけだ。これが「kill」みたいな単純な(使い方の限定された)動詞なら、あまり悩まなくて済む。ところがhaveと来たら! I、III、V、3種類の文型を取りうるうえに、それぞれの意味がかなり違う。幸いにしてこの文は名詞句が一つしかないので、I、Vは除外。III文型と仮定して先へ進む。 - 文型に即した訳語を選ぶ。
haveがIII文型として使われる場合、最も頻出の意味は「持つ」だ。異論がなければここで終わり。haveの他の意味も検討して、最も良いものを選ぶ。ここで初めて「文脈から判断して」という言葉が登場する。これ以前に文脈が介在する余地はない。
おわかりいただけるだろうか。わかりにくかったら、逆に後ろのプロセスから検証していくとわかりやすい。
4.文意を判断するためには、どうしても3.文の構造、文型がわからなければいけない。でなければあてずっぽうになってしまう。
3.文型を知るためには、2.述語を選び出した上で、動詞の用法に関する知識を持つことが必須である。
2.どれが述語動詞か判断しようと思ったら、1.語の品詞、そして機能語(つまり代名詞や助動詞、前置詞など)は知らなければならない。
ともかく、このプロセスを踏まずに、「I have a pen.」という文を理解することはできないはずなのだ。もしそうでなかったら、それは「前に同じものを見たことがある」やり方に違いない。
逆に言うと、このプロセスでほとんどの文章は読むことができる。――読んだことがない文章でも、単語さえ知っていれば、組み立てられるのだ!
単語力の最初の一つは、1.のプロセスの「品詞判定」であり、次の一つは3.のプロセスの「述語のとりうる文型とその意味」であり、最後に4.プロセスの「語意」である。
ことほどさように、英語力を高めるには単語力が必要なのである。
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