『once ダブリンの街角で』グレン・ハンサード、マルケタ・イルグロヴァ

 

ダブリンの街角で出会った二人の心の交流を穏やかに描く。

ストリートミュージシャンのギタリスト男性、チェコ移民のピアノを弾く女性。その二人が街角で出会い、ささやかなことから仲良くなり、お互いに惹かれ合っていく。

意欲的な脚本、演出でありながら、「実験的作品」に堕することなく、気持ちのいい小品に仕上がっている。作品中、歌の比重がけっこう大きいんだけれど、印象的な旋律、コーラスもきちんとそれに応えていて、不満を抱かせない。

見終わった後、ほのぼのした気持ちにさせてくれる作品。
レビュー:★★★★
■once ダブリンの街角で

人生でたった一度、心が通じる相手に出会えたら……ストリートから始まるラブストーリー

原題「once」
2006年 アイルランド 87分
監督・脚本:ジョン・カーニー
出演:グレン・ハンサード、マルケタ・イルグロヴァほか
配給:ショウゲート

以下ネタバレ含む。未見の人は読まない方がいい。

作品の雰囲気としては『Lost in translation』に似たものを感じる。男女の間のほのかな心の交流が優しい。

音楽をメインに据えた構成はなかなか意欲的だと思った。登場人物が突然(不自然にも)歌い出すミュージカルはあまり好きではないのだが、この作品では物語と歌が自然な形で挿入され、きちんとした一連の映像物語をなしている。音楽もいいクオリティだと思う。

個人的には、たまたま最近ダブリンに関してホットな状況だったので観に行ったというのもあり、ダブリンの情報に少しでも触れることができてよかった。もっとも作品自体としては、ダブリンという舞台設定にとりたてて意味があるわけではない。どこの街のどんなストリートであっても違和感のない物語だ。

実はこの作品では、主人公二人の名前が最後まで登場しない。この意欲的な演出に気づいたのは、スタッフロールを見た時だった。最後まで自然な形で、しかし、あくまでも主人公は「no name」なのだ。
もしかしたら他にもこうした意欲的な演出が仕組まれていたのかもしれないが、気づかなかった。

『once ダブリンの街角で』グレン・ハンサード、マルケタ・イルグロヴァ

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