チェスタトン好きに悪い人はいない(津村記久子氏&柴崎友香氏&山崎ナオコーラ氏トークショー)

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青山ブックセンター洋書コーナーにパイプ椅子を並べてトークショー。
左)柴崎友香
中)津村記久子
右)山崎ナオコーラ
ちょっと遅刻しました。3人の語りが慣れてない感じだけれど、話はなかなか面白かった。
面白かった言葉をいくつか、断片的に。

柴崎「(なんで作家になったのか)動機ってそんなに重要なのかな、と。動機を言わないと本気で話してないみたいに思われるのがちょっと。生きていることにも動機はないけれど、本気で生きてますよね」

ナオコーラ「(なぜ作家になったかというと)他にできることがないんですよ。本を出す時に命が縮んでもいい、とか思いますよね」

柴崎「いや私は長生きしたいんですけれど」

ナオコーラ「10年縮んでもいいですね」

柴崎「津村さんは?」

津村「3年くらいですね(笑)」

ナオコーラ「5冊出しちゃったのでもう今年死ぬかもしれません(笑)」

津村「60歳になって、どんな小説を書いているか知りたくないですか。私は知りたいなと思います。今年で死ぬなんて思わないでください」

ナオコーラ「そしたら私が先に死ぬので、お二人に追悼文を書いて欲しいです。今回出した本の話の中ではわたし90歳くらいまで生きることになっているんですけれど」

柴崎「作家仲間に追悼文をもらうんですよね」

ナオコーラ「はい」

柴崎「じゃあ生きていたら書きます(笑)」

人間の表層を描くこと(およびそういう批判)について。

ナオコーラ「どんなことでも小説にはなると思います。でもそれ(人間の表層を描くこと)ってわざと(意識的に)やっていることじゃないですか。実際の人間関係を写し取るために小説を書いてるって思われるとすごく心外だなと思われるんですよね。今までの読書体験の中で、感じている違和感とか、だけど恋愛ものを読んでいるとどきどきするっていう感じとかあって、いわゆる本気の恋愛じゃない疑似恋愛的なものでもちゃんと文学にしていけるっていう感覚が私はあるんですけれども、そういうことを一生懸命やっている時に(評論家などに)『ワカモノが実際に関係を築いてない』って思われるのはすごく切ないですね」

柴崎「前にナオコーラさんが対談した時に、町の様子をそのまま書くんだったら地図を書けばいい、小説は地図じゃないから地図じゃなく街を表すので、現実を写しているわけじゃない。自分が表したい何かのために小説を作っているわけだから、『現代の若者は』的な評論をされたりすると、そのために小説を書いているんじゃないっていうのは思いますね」

津村「今回のナオコーラさんの短編集、15編、あとがきも小説みたいなのであれも16個でもいいなと思うんですけれど、それぞれで面白いことをやっていて、いつも「小説にしかできないことをしたい」と仰っているので、すごいいろんなことをやっていて面白かったです。すごい自由ですよね。架空のバンドのバイオグラフィとか、人が出てこないとか、いろんなタイプの話があって。

津村「アンモナイトを~とか感動しました。すごく真実味があるんです」

柴崎「私が出てきたのにはびっくりしました(笑) しかもなぜか総ルビがふられて」

ナオコーラ「ほんと自由にやれてよかったです」

柴崎「昨日ちょっとゲラを見てて、一緒に見てた友達が、このナオコーラさんはヒップホップだね。ルールがないのがルール、と」

ナオコーラ「その人友達になりたいです(笑)」

津村「作品の並びとか気を遣いはりました? こう来てこう来て……計算されつくしている感じが」

ナオコーラ「あ、そうしようと思いました(笑)」

柴崎「すごい嬉しそう(笑) 『もっと言って』みたいな」

ナオコーラ「すんません小説誉められだしたらすごい笑顔になっちゃって」

津村「アメーバの発生から小説の登場人物につながっていくところとか、頭から読むことの楽しさを」

ナオコーラ「アメーバとかすごく書きたかったんです。オビに書きたかったんですけれど書いても売れないらしいので、結局『キラキラ同棲小説』って。読者を馬鹿にしすぎじゃないかと」

ナオコーラ「最近室生犀星が好きで。おじいちゃんになっておかしくなる作家っていいですね」

柴崎「あ、いいですね。私、自分がおじいちゃんになれないって気づいたのがショックでした。眉毛が伸びたかったんですよ。中学生くらいのころにあれいいなぁ、と思っていたんだけれど、なれへんって気づいた時にショックでした。おじいちゃんになってはじけるが好き」

ナオコーラ「室生犀星とかは変なことをすごい書き始めるんです。杏ッ子だと、娘のことを書いているんですけれど、執拗に娘の体のことについて書いたりとか。おじいちゃんになって、尿道炎になったっていう小説があって、病院に行ったらていもうされて毛を取り返してくれ、ってことをすごく訴える。そういう気分は1時間もすれば治るから我慢してくれ、と看護婦に言われたってことをいくらも」

柴崎「歳をとるってことは自由になるってことだと思ってます」

ナオコーラ「なるほど。前言撤回して長生きします。本を出して縮まる寿命も1ヶ月くらいにします」

柴崎「好きな作家、いっぱいいて、一人の作家をずっとではなくて、気が向いた人をちょっとずつ、なんですが、ヴォネガットは今好きです」

津村「私はチェスタートン、ヴォネガット、マーガレットミラーがすごく好きなんですけれど。この場ではちょっと盛り上がらないかな、と……参考にしてきたのがその3者です。最近見習いたいのがサマセットモームです」

柴崎「好きな小説は夏目漱石の草枕ってことにしているんですけれど、一回、写した時があるんですよ。バンドも絵もコピーするから、写そうかなと思って草枕を写したことがあるから、好きな小説は草枕にしとこうと。場面の切れ方とか風景の表現とかすごく好きなんで」

津村「新刊について」

柴崎「津村さんの真ん中に入ってた話の、ブログ書いてる女の人がすごいキャラクターが良かったです。嫌な感じのね。主人公がすごいフクザツな思いがある女の人が出てくる、絵本作家兼ミュージシャン」

津村「いちばん作り込んだキャラクターですね」

柴崎「見なければいいのにそのブログを見てしまう、っていう……名前が絶妙だったんですけれど」

津村「最近、ペンネームみたいな名前を子どもにつけるじゃないですか。そういう風潮みたいなのに居心地が悪いので、すごく可愛い名前にしようと思って、」

柴崎「ビミョウにむかつく感じが」

津村「名前にすごく気を遣うんですけれど、ビジュアルでこの人がどれだけ可愛いかを小説で表すのが難しい。割と端的に名前に象徴させたりするとこがあるので、その名前に気を止めてもらえたのが嬉しいです」

ナオコーラ「名字がカタカナなのはなぜですか」

津村「あまり黒々としているじゃないですか。見た目があまり堅いな、ってのが気になっているので、カタカナで瓦斯抜きをしている感じですね。名前にも、名字にも見えるようにはなりました。理由は、何か名前で照れがあるんですよ。小説の中のキャラクターを下の名前で呼ぶのって、照れというか違和感があって、名字で呼びたいんですけれど、名字で呼ぶと埋もれちゃう面があるので、カタカナになっているのと、あと名字そのものがカタカナであったら、突き放した感じがあるから、名前でも使える名字を使うってことに気を遣っていますね。文学界に載せていただいたのにもヨシノさんって人なんですが、ヨシノ○○っても○○ヨシノって人もいるし」

ナオコーラ「女性キャラクターに対しての先入観ってものにたいして、反対でーす、みたいなことをやっているので、」

柴崎「男の人は名字、女の人は名前ってなるのが」

ナオコーラ「作品中では丸山なのに批評ではキミエはって言われちゃうのが気になっていて名字だけにしたい。あと名字をゴツくしたくて、女性キャラの名字はごっつくしているんですよ。清瀬とかかわいい名前じゃなくて。多少の抵抗したい感じが」

津村「女の子で猪熊とかっていいですよね。女の子にあえて堅い名前を付けたいっていうのはわかります。」

ナオコーラ「イリエ最初は名前だと思っちゃうんですよね。男の人でそう書いてあったらそうは思わないし、変な呪縛みたいなのを感じます」

津村「ナオコーラさんの群像の一番新しい作品も、小笠原が男女どっちかすぐにはわからないですよね」

ナオコーラ「それも小説ならではですよね。」

津村「フェアだなって思います」

ナオコーラ「小説なら、同じ名前で書いているけれど、同じ人だかわからないし」

津村「小説って不自由って言えば不自由じゃないですか。黒い字しかないし。映画みたいにキラキラさせるとか特撮もできないし。同時に2個のことを説明するとかできない。不自由なことはあるんですけれど、逆にそういうところが自由でなんでもやっていいな、って思ったんですよ」

津村「ミカさんって主人公の女の人の選択がすごく絶妙なんですよね。スカーレット・ヨハンソンとエマニュエル・ベアールとかが好きっていうのかすごく上手くて、この人の言うことなら信用できる。っていう。女の子を見るってことに対して、普通のエネルギーの注ぎ方ではエマニュエル・ベアールは出てこないですよ」

柴崎「私が普段からエネルギーを注いでいるので、自分が好きな人を出したかったんです。オオタリナちゃんは、ナオコーラさんの作品にも出てくるんですが、作品のモデルにした人がオオタリナちゃんが好きと言っていたのでお礼の意味も込めて。そこは女の人同士だとわかるってとこはあると思います」

柴崎「電車で隣の人の本を読んだり、お店で隣の人の話を聞くのも好きなんですけれど、ナオコーラさんがレジで話したいと思うように話しかけたいと思うんですけれど、知らない人には話しかけられないですね。小説っていう形ならそれをできるかもしれない、って」

ナオコーラ「その場にいる不思議っていうのはよく出てきますよね」

柴崎「居合わせる不思議っていうのは感じます。知らない人でも話しかけていいんじゃないかって思いますね。一回ビデオ屋で知らないおばちゃんがチェーン・リアクションを探している時に目の前にあるのに気づかない時があって、その時には話しかけました。おばちゃんにも喜んでもらえたんで、よかったんですけれど、そういうんじゃなくても話しかけていいんじゃないかと思いますね。『今日話しかけてもいい日』ってのができたらいいと思います。」

津村「日本中で」

柴崎「バレンタインは、もうみんな普通の日にも告白するじゃないですか。だからチョコあげたら話しかけてもいい日、とかあったらいいな、と」

ナオコーラ「でも街で『手相を勉強していますあなたの手相を……』とかって言われたら、自分のテリトリーですって言いたくなりますけれど。手相の人が話しかけていいんだったら、自分が話しかけてもいいなって思います。」

もがみが質問しました。

「津村さんはチェスタトン好きということですが、どんなところが好きですか」
津村「『木曜日の男』がすべての本のうちで一番好きです。3ページごとに笑わせながら、人生をなぜ生きるか、ってとこまで最後まで行き着くじゃないですか。そこが読者としても好きだし、作家としても見習いたいところです」

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