酉の話
「酉なんてさ、トリってくらいだから最後になるって決まってるようなもんだろう? 競争すりゃあ犬に勝てっこないさ」と犬。 「結構。」と酉。「そのケンカ受けて立ちやしょう。結果も出ないうちからつべこべ言うのは滑稽ってもんで。こ
もっと楽しく。
「酉なんてさ、トリってくらいだから最後になるって決まってるようなもんだろう? 競争すりゃあ犬に勝てっこないさ」と犬。 「結構。」と酉。「そのケンカ受けて立ちやしょう。結果も出ないうちからつべこべ言うのは滑稽ってもんで。こ
「これより点呼を行う!」整列した未たちを前に、未が言う。「未がぁ一匹!」「未が二匹!」「未が三匹!」「未が……」 「おい、起きろ、おい!」「はっ。ここは一体……?」「お前は点呼で未を数えすぎて、もう三日も昏睡状態だったん
走らない午がいた。その午は普通の午のように駆けることをせず、ひとところで跳ね、跳び回り、奇妙な足踏みを繰り返した。仲間の午たちは「あいつ、クレイジーになったんじゃないか」と噂しあった。 午たちはみな規律正しく走ること
巳の話 巳は己れの尾を噛んだまま、已に数百年も海の底で眠っていた。微睡みながら巳は夢を見た。夢の中で巳は己の尾を噛んだまま、已に数万年も海の底で眠っていた。 微睡みながら巳はふと考えた。自分はどうしてここにこうして居るん
鯉は滝を上って辰になるというが、実は卯も修行を積んで辰になるという。わしはそれを見たことがある。 ある春の夜、若者が怪我をしていた兎を助けたところ、一週間後の夜、辰が、若者の暮らす小屋に現れた。 「我はもともと辰であった
月面に卯――つまり兎――がいるとわかったのは、昨年の暮れのことだった。
李陵・山月記¥326 今年の年賀状に書いた「寅の話」について「意味がわからん」とのお問い合わせが多すぎるので、とりあえずDiaryBBSに追記を付けました。全体として、中島敦「山月記」のパロディになっている、ということだ
年が明けると自分は既に寅と成っていた。しかし、何故こんな事になったのだろう。妻は首を傾げて言った。 初夢に何か悪い夢でも見たんじゃないの。 自分はしょんぼりしながら胃の辺りを押え、昨日見た夢を一つ一つ思い出してみたが心当
子のヤツの話しぶりは、国文法の教師を思い出させる。文節を区切って喋るあのしゃべり方だ。 「あの『ねずみの嫁入り』とかいう話ね、アレはちょっとねずみ一族を馬鹿にしているね。そう思いませんか」 「そうかねぇ」 「そうですとも
僕の友人である亥の話をしようと思う。彼は亥でありながらとても優秀で、人からも好かれる性質だったし、仕事も順調だった。彼のモットーは「亥の一番」ということで、何せ自分は亥ですから、と言って率先して何でもやった。その前向き