実在の人物をモデルにした伝記的な要素の強い映画。昭和40年代に邪馬台国ブームを巻き起こしたという宮崎康平氏と、それを支えた和子夫人を描いている。
あちこちにツッコミどころはあるけれど、ところどころにぐっとくる場面もあり、それなりに面白かった。細部が甘いので映画好きには勧められないけれど、普通の人がぼんやり見る分にはいいかもしれない。夫婦の心の交流を描いているので、特に既婚者にお勧め。
邪馬台国に関する知識はほとんど必要ないので、ご安心を。
◆映画『まぼろしの邪馬台国』公式サイト
以下ネタバレ。
バナナ大好き、盲目の島原鉄道社長である宮崎康平氏は豪放辣腕、福岡の放送局で働いていた和子氏を口説き落とし、島原鉄道観光バスガール育成に協力してもらう。結局のところ、ワンマンが過ぎ、天災後の復旧をそっちのけで趣味の発掘に没頭しがちな康平氏は社長の座を追われてしまうのだが、福岡に帰ろうとした和子氏を泣き落としでカミさんにすることに成功する。生活が苦しいながらも康平氏は邪馬台国の研究に没頭し、和子夫人はそれをけなげに支える。宮崎氏が口述筆記で書き上げた『まぼろしの邪馬台国』は大ヒットし、見事、彼の研究は世に認められることになる。
話はけっこう面白いのだけれど、映画としてみるとちょっと散漫な印象。なまじ現実のモデルがあるために脚色しきれない部分もあるだろうし、やむをえないことなのかな。
プロポーズのシーンはなんだかただの泣き落としになっちゃってたり、邪馬台国のイメージシーンはただのコスプレになっちゃってたり、最後の場面はミュージカルになっちゃってたり、いろいろツッコミどころが多いので、映画ファンが見る価値はないかと。
伝記としては、宮崎氏のキャラクターが際だっていて面白い。竹中直人が頑張っている。いるんだろうなぁ、こういう傑物。宮崎県にもこうした「地方の名士」というか「観光産業の父」みたいな人がいたらしい。各地方都市に一人ずついるものなのかも。
◆宮﨑康平 – Wikipedia
◆まぼろしの邪馬台国 – Wikipedia
これを見ると映画とけっこう違う部分もある。まぁ映画の方は和子夫人の視点が強いような気もするので、そこでWikipediaの記述とは分かれてしまうのかもしれない。
作中で登場する宮崎バナナ園は、「宮崎バナナ園 – Google 検索」をちゃんと調べるとわかるが、現在では存在しないとのこと。
この映画の後で邪馬台国が気になり出したら星野之宣『ヤマタイカ』とかオススメ。
BGMは山本正之「魏志倭人伝」でお願いします。
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