SF、ミステリ、エッセイ……と作品を書きまくったマルチ・タレント作家アイザック・アシモフの傑作ロボットSF。ミステリ要素とSF要素が絶妙の融合をみせており、読者をつかんで話さない。
僕が中学1年生まで、「好きな本」の1位に挙げていた本。中学2年生になるとハインラインの『夏への扉』に出会ってノックアウトされてしまうんだけど、それまで断然1位をキープしていたのがこの作品だ。
先日、友人に勧めたので、ここでも紹介しておく。
この作品は未来の地球を描いていて、しかもその未来はあまり明るくはない。地球人類は陽光を浴びたり自然にさらされることを極端に恐れるようになってしまい、鋼鉄のドーム都市の中に閉じこもってしまっている。ロボットが重要な労働力として発展した結果、失業者が増え地球人は誰もがロボットを憎む。宇宙人(元々地球人だが外宇宙の惑星で暮らす人類をこう呼ぶ)は、地球の排他主義を批判し、圧力をかけて市場解放を迫る。
そんな中、ドーム都市の外で宇宙人が殺害され、刑事イライジャはその捜査を担当することになる。捜査に当たっては宇宙人が送り込んだパートナーと行動を共にしなければならない。しかもその“パートナー”は、人間と見分けがつかないほどそっくりに作られたロボット(≒アンドロイド)のR・ダニールだった。
ロボットと共に行動することの不満、戸惑い、そして恐れ。そうしたものを抱えながら、イライジャはこの都市に蔓延する問題について考え始め、そして殺人事件の核心に迫っていく。
アイザック・アシモフのロボットものというと、一般には『ロボット三原則』が有名で、それは連作短編集『われはロボット』に代表されている。それと双璧をなすロボットものがこの『鋼鉄都市』と『はだかの太陽』のシリーズだ。ここでもロボット三原則は大きな論題となる。アシモフ的未来史の一端をなすこれらの作品は、ロボットと人間の確執を鋭く描き出している。(ここで描かれている地球が『銀河帝国』シリーズに続いていくのではないか、という噂を聞いた気がするが、『帝国』シリーズの後半作品を未読なので正確なところはわからない)
ミステリ小説として非常に良くできているので、SF的な設定さえ受け入れられるなら、娯楽小説として普通に楽しめる。
※Assimovの発音は「アジモフ」に近いと言われているが、ここでは作品の著者名として記載されている「アシモフ」に統一した。