プロジェクト・タングラムについて書こうと思う。
これは、私が温めているプロジェクトである。
これは、遠く離れている子どもたちへの手紙である。
名前がかっこいい? これは『オラトリオ・タングラム』のパクリである。
これは「人は、遠くにいる人のために何ができるのか」という命題である。
私が、パラサイヨという団体でフィリピンの養育施設――孤児や経済的理由で親元にいられない子どもを育てる施設――を支援するようになったのは2006年で、2007年にはよりよく彼らのことを知ろう、ということでフィリピンに関するさまざまな調査をした。2008年までには、養育施設が抱える問題の一つが「教育」であることが明らかになった。
彼らは学校に通っているが、教師の数が少ないのか、1クラスの人数は多く、教師のサポートは十分とは言えない。経済的に不遇な子どもたちは、学習機会も不備で、他の生徒に差を付けられてしまいがちだという。
どうしたら、彼らの学力を上げることができるのか。いろいろな意見があった。家庭教師を雇うにはお金がかかるし、孤児院でも十分検討されている(実際、学生のアルバイト・ボランティアは既にいた)。 直接教えようにも、我々が定期的に子どもたちと話をする機会は持てないし、そんな設備も、時間もない。我々が彼らを訪問できる機会は年に1回だけしかない。
どうしたら、彼らの学力アップに貢献できるだろうか。
ヒントの一つは、我々が訪問した時に行ったワークショップの反省会だった。
図画工作的な作業を担当したチームから、子どもたちは、図形に関する力が弱いようだ、という感想が出た。幾何学に関する直感的な理解が弱いらしい。
そこで、ピンと来た。
「タングラム」が、我々の問題を解決してくれる、糸口になるのではないか。
→タングラム – Wikipedia
パラサイヨのメンバー専用SNSにある、「プロジェクト・タングラム」のページ序文には、こう書かれている
子どもたちに接触できるのは年に1回だけ。その1回だけで、子どもたちのためにできることはないか。彼らの成長のために、してやれることは何だろうか。
それはアイデアを与えたり、道具を与えたりすることではなかろうか。我々がいなくても、彼ら自身が1年間ずっと使うことができるアイデアであり、道具だ。
プロメテウスは人間に火を与えた。ヘビはアダムとイヴに知恵の実を与えた。ろくな例が出てこないが、しかしたしかに知恵は賢者の贈り物である。
プロジェクト・タングラムは、年1回のチャンスを使って、子どもたちの成長の一助となるアイテム、遊び、発想、文化などを輸出しよう、というプロジェクトである。
かっこいい序文ではないか。(私が書いた)
タングラムとシルエット・パズルの問題集を子どもたちに与えれば、きっと、彼らは自分たちで遊びを作り出し、力を伸ばしていくに違いない。今のところの問題は、タングラムをどうやって大量に安く調達するかだが。
タングラム以外にも、子どもたちが自分で興味を持って、才能を伸ばせるアイテムは、きっとあると思う。そういうチャンスをたくさん作ることができたら、いいなぁ。
と思いつつ、温めているアイデアなのであった。
あ、意外と安い。