『リトル・ランナー』

マラソンをモチーフにしつつ、少年の成長と努力、信念と奮闘、家族愛と友情を描いた佳作。登場人物一人一人の心情が丁寧に描かれ、全体として説得力のあるドラマとなっている。随所にちりばめられたユーモアも楽しい。
ぴあ映画満足度ランキングで1位になっただけのことはある(49人が平均92.6点をつけている)。

※なお、パラサイヨイベントとしてのレポートはもがみの騒動見聞録 [レポート] シアタージャッカー&ランナーズを参照あれ。

以下ネタバレ。


物語自体は、基本的にはステロタイプな設定だ。主人公は母親の目を覚まさせることができる、と信じてマラソン大会に挑む。もしこのありきたりの設定に甘んじてしまっていたら、とんでもない駄作になっていたことだろう。
しかし、作品自体は絶妙のバランスで組み立てられ、見る者を引き込んでゆく。主人公と母親、主人公と悪友、主人公が恋する少女、主人公と教師、主人公と校長、主人公と看護婦……画面に登場する一つ一つの関係を丁寧に描いていくことで、主人公の成長と、彼が引き起こす変化に説得力を持たせている。
クスリと笑わせる場面も多く、作り手のユーモアが感じられる。

主人公が見る(あるいは見たと信じる)ビジョンのいくつかは奇妙に幻想的で、作品のリアリティに微妙なスパイスを加えている。これらのビジョンをどう解釈するかは人それぞれだが、人によっては微妙な齟齬を感じることもあるかもしれない。私自身はまったく問題なく、楽しむことができた。

非常に厳格なカトリック系の私立学校が舞台となっており、作品全体を通じて「奇跡」という言葉がキーワードとなる。カトリックの文化背景について知識があれば、より細かい部分まで楽しめるかもしれないが、必須知識というほどでもない。

見ていて目頭が熱くなるシーンも多々あり、誰にでもおすすめできると思う。元気が出ること請け合い。

『リトル・ランナー』

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