寅の話
年が明けると自分は既に寅と成っていた。しかし、何故こんな事になったのだろう。妻は首を傾げて言った。 初夢に何か悪い夢でも見たんじゃないの。 自分はしょんぼりしながら胃の辺りを押え、昨日見た夢を一つ一つ思い出してみたが心当
もっと楽しく。
年が明けると自分は既に寅と成っていた。しかし、何故こんな事になったのだろう。妻は首を傾げて言った。 初夢に何か悪い夢でも見たんじゃないの。 自分はしょんぼりしながら胃の辺りを押え、昨日見た夢を一つ一つ思い出してみたが心当
今年は丑が帰ってくる。僕がそんな噂を聞いたのは年の暮れも押し迫った時期のことだった。 2、3年前だったか、丑は突然「仲間の丑たちに囲まれた閉鎖的な暮らしにうんざりした。誰にも邪魔されず余生を送りたい」と言い残してどこか地
子のヤツの話しぶりは、国文法の教師を思い出させる。文節を区切って喋るあのしゃべり方だ。 「あの『ねずみの嫁入り』とかいう話ね、アレはちょっとねずみ一族を馬鹿にしているね。そう思いませんか」 「そうかねぇ」 「そうですとも
僕の友人である亥の話をしようと思う。彼は亥でありながらとても優秀で、人からも好かれる性質だったし、仕事も順調だった。彼のモットーは「亥の一番」ということで、何せ自分は亥ですから、と言って率先して何でもやった。その前向き
僕のところに戌がやってきて尋ねた。 「我が輩は戌である。ところで、新年はどっちの方から来るのかね」 僕は言ってやった。 「君、もう新年はとっくにやって来ているんだぜ。何を今さら」 戌のヤツは疑わしそうに僕を眺めた。 「君