あるところに三匹の亥がおりました。
最初の亥は「家を持つ方が面倒だ。旅に出よう」と旅立ち、ジャーナリストとして各地の様子を伝えました。狼はとても追いかけられないと考え、亥を食べるのを諦めました。
二番目の亥は「家を建てるのは面倒だ。賃貸にしよう」と狼に部屋を借りることにしました。狼は亥を食べるよりは家賃をもらった方が得策だと考え、亥を食べるのを諦めました。
三番目の亥は、「立派な家を建てよう。天にも届くような」と鉄筋コンクリートの立派な家を建てました。セキュリティも万全です。狼は「だがなんとしても突破してやる」と11匹の精鋭チーム「オーカミズ11」を組み、電子の要塞に挑みます。 あらゆるセキュリティを突破し、亥に迫る狼。その妨害に手を尽くす亥。闘いは長く続きました。
「来たか」
「ああ。お前に会うためだけに、仲間を集めてここまで来た……長かったぜ」
「何がそんなにお前を駆り立てたんだ?」
「さァな。ただお前にもあるだろう。必死に前を向いて走った記憶がさ」
「……忘れたよ。そんな昔の記憶はな」
「思い出せ! 昔のお前を。俺はそんなお前に憧れてたんだぜ」
その時、亥が2頭飛び込んできました。
「無事だったか」
「兄さん!」
「また今年からやり直そう。3頭で!」
狼と亥の長い攻防は終わりました。こうして、3頭の亥と11匹の狼は、小さなひねくれあばらやにそろって住んだということです。
亥の話