20歳になったアリスを描く、いわば「ワンダーランドの復活」なお話。二十歳になったのに大人になりきれないアリスは、貴族の坊ちゃんのプロポーズを公衆の面前で振り切り、白兎を追跡、結果、例によって例のごとく深い穴に落ちてワンダーランドに足を踏み入れる。みたいな。
原作というか元ネタの『不思議の国のアリス』『鏡の国のアリス』が割と理不尽なジョークに終始するのに対して、この映画はきりっとしたストーリーができていて、冒険と闘いと策略と裏切りと友情の物語に仕上がっている。もちろんジョークは多いけれど、よく考えると、ストーリー展開はヒロイニック・ストーリーだ。元ネタのイメージを好きな人が楽しめるかちょっと心配な気も。でも原作に思い入れのない一般人には、この方が楽しめるんだろうな。
映像がやっぱすごいね。一分の隙もないっていうか。画面全体が雑然として、それでいて不思議の国らしい雰囲気を醸し出している。これがティム・バートンのこだわりなのか。
全体にCGでいじっている部分が多いので、ケレン味の強い画面になっている。奇妙なバランス。ヘレナ・ボナム・カーターの赤の女王などは、あまりに頭部のバランスがおかしいので、本人の演技云々よりも一目見ただけでなんだか不吉で不気味な感じがする。一方、ほとんどいじってないと思われるアン・ハサウェイの白の女王が醸し出す、ちょっとねじの外れた感じも可笑しい。美人なのに。
ジャバウォックとアリスが戦う絵は、原作のテニスン画にもあるけれど挿絵のみで、本文中にそういう記述はない。ホントに大剣かついでジャバウォックの首をはねてしまうアリスは、どう見てもアリス・リデルとは似てもにつかないので(事実、名字もリデルではなかった)、アリス・リデルのイメージからかけ離れていく結末の流れも、なんとなく「ま、いいか」という気にさせてくれる。これはアリス・リデルに似た別のアリスの物語なのだ、きっと。
DVDについていたメイキングの特典映像が面白かった。グリーンバックのスタジオで、緑の服を着て演技する人々。それにCGクリエイターたちがいかにして絵を付けていくか。思っていた以上にあちこちいじってあり、なおかつ、手間暇がかかっていることで、これもまた一つの「ワンダーランド」を見たような気持ちになった。
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