『パネルでポン』(任天堂)

 ゲームのライターなんてやってると、すごいゲーム好きなんだと思われることがある。実際、そういうライターさんもいるし、むしろゲームライターはそうあるべきだ。
 だが、僕はそれほどすごくゲームにのめり込むタイプではない。中学生の頃はやたらのめり込んでいたんだけど、最近はほかにやりたいこともたくさんあるし、なにせゲームは時間がかかりすぎる。普通によくできたゲームなら1本で通算20~30時間は遊べるし、ものによっては50時間以上遊べるものもある。そんなのにいちいちのめり込んでいたら、他に何もできゃしない。

 ただ時々はやっぱりツボに来るゲームがあって、そういうのに遭遇すると文字通り虜になってしまう。離れられなくなってしまうのだ。『パネルでポン』、通称『パネポン』は、一度始めたらやめられない、「かっ●えびせん」みたいなゲームである。


 『パネポン』はアクションパズル、いわゆる「落ちモノ」に分類される。花の妖精が妖精界を救うため、操られている仲間たちを救いだしに行く……というかわいらしいイラストのストーリーがついている。だが、絵のかわいらしさに騙されてはいけない。このゲームは、最もコアなパズルゲーマーたちをうならせ、数知れぬ廃人を作り出した実績を持つ、危険なまでに中毒性の高いアクションパズルなのだ。

 テトリスに似た、あの落ちモノ特有の画面構成。画面にはパネルが敷き詰められている。操作は、カーソルを動かして左右隣り合う二つのパネルを入れ替えるだけ。入れ替えた結果、縦または横に3枚以上同色のパネルが並ぶ(■■■のように)と、そのパネルは消滅し、空いた場所に上のパネルが落ちてくる。パネルは画面下から徐々に1列ずつ補充される。画面最上段までパネルが埋まってしまったらゲームは終了だ。

 しかしこのゲームの秀逸なトコロは、実は、システムではないと思っている。それは「インターフェイス」ということに尽きる。あらゆる場面で異様なまでに考え抜かれ、単純化・最適化されたインターフェイスが、このゲームを離れられないものにしているのだ。
 ゲーム中にできる操作は「カーソル位置のパネル左右入れ替え」のみだと書いた。非常に単純なインターフェイスだ。だが、それは簡単だということではない。その単純な操作が、常にどんな場合でも可能なのだ。画面が激しくフラッシュして止まっているように見える時でも、入れ替えできる。上から落ちてくるブロックの2番目を空中でさっと横と入れ替える、ということもできる。接地する瞬間のブロックをさっと横と入れ替える、ということもできる。それには超人的なタイミングのよさが必要だが、しかしそれは可能なようにプログラミングされているのだ。このゲームでは、いつでもどこでも、「パネルを入れ替えたい」時に「入れ替えられる」。

 「どんな場合にも思った通りのことができる」というのは、まさにインターフェイスの極致だと思う。この『パネポン』ではゲーム以外の部分でもそれが徹底されている。必要ないムービー、その他の画面はスタートボタンを押すことでことごとくスキップすることができる。一方で必要な選択肢はスタートボタンでもAボタンでも選択できるため、デフォルトの選択肢でゲームをするならスタートボタンを連打しているだけですぐゲームにたどり着ける。また、ゲームモードを選択した瞬間、ほんの一瞬、暗転するまでに間がある。普通であれば気づかない程度のごくわずかな間だが、この一瞬にBボタンを押すと選択はキャンセルされ、前の画面に戻る。選択肢を間違えた瞬間、反射的にBボタンを押すゲーマーの習性を熟知しているのだ。
 こうした異様に細かい点にまで配慮がなされ、ゲーム中のストレスを極力排除している。プレイ中にストレスを感じさせる場面がまったくゼロに近い。待たされると感じる場面もない。誤操作を誘発する部分もない。純粋に、ゲームの楽しみだけがある。これはまさに「インターフェイスへのこだわり」が生んだ傑作と言えよう。

 ゲームに敗北し「悔しい!」と思った瞬間、反射的にスタートボタンを連打しているだけで、すぐに「コンティニュー?」という質問が表示され、「Yes」が選択され、待たされることなく再試合がスタートする。よくできた秘書を雇っているようなものだ。「悔しい」と思った瞬間には、サササッとお膳立てがなされ、およそ考えるほどの時間もなく再試合が始まっている。
 そんな優れたインターフェイスだからこそ、『パネポン』を一度始めたら止められない。一度始めたら、2時間くらいはハマってしまう。

 また当分封印しておかないと、何も手につかなくなっちゃうな……。

■ソフト
 SFC『パネルでポン』任天堂
 GB『ポケモンでパネポン』任天堂
 GC『NINTENDO パズルコレクション』任天堂
※リンク先はいずれもAmazon.co.jp。

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ソリカン内「paneponer and driller/パネポナーとドリラー」
http://www003.upp.so-net.ne.jp/soli_com/essays/archive/52panepon.html

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