『夏への扉』ロバート・A・ハインライン

ブログの始まりには、わたしの三大奇書……じゃなくて三種の神器について語っておくべきかと思う。私が出会った時代順に語ると、最初の1つがSFの名作『夏への扉』(ロバート・A・ハインライン)である。

あらすじ。
主人公が愛する飼い猫、ピートは冬になると、夏への扉を探して部屋を歩き回る。彼(ピート)は、その借家にある12のドアのどれか1つは、暖かい夏へ通じている、と信じているらしいのだ。主人公は、そのたびにピートについてまわり、12のドア全部を開いて、やっぱり冬だということを納得させる。凍える冬を抜ける「夏への扉」をピートはいつも探していた。

一方、主人公自身も絶望の冬にいた。恋人と親友が結託して主人公を裏切り、共同経営の会社から追い出した上、手塩にかけた発明品(万能ロボット)まで奪い去っていってしまった。最初から恋人は主人公を騙すつもりだったのだ。こりゃ酷い。

絶望した主人公は、人口冬眠によって30年後の世界を目指す決意をする。もちろん、猫のピートと一緒に。それが「夏への扉」だと信じて……

中学生の頃の僕がこの作品を読んでもうハマリにハマってしまい、それまでのアシモフ『鋼鉄都市』から乗り換えて、ハインラインを好きな作家に挙げるようになってしまった作品。
この作品は一般にSFの最高傑作と考えられており、SFを読まないという人でも、この作品には好意的な意見を寄せる人が多い。この作品をけなすヤツは、見る目がないか、世間の評価に反発したいだけのひねくれ者である。……ま、そこまで言うと極論か。

作品としてのテンポもよく、ぐいぐいと引き込まれて読める。30年後の世界でのダニエルをとりまく生活、そしてそこで広がっていく事件の数々も、時間や人工冬眠という問題を非常に興味深く扱っている。

一度、友人に「『夏への扉』と同じくらい面白いSFはどれ?」と訊かれてうなったなぁ。困った困った。一応『銀色の恋人』を挙げたけど。

ハインラインの素晴らしい点は、政治・経済や生活に対する知識が非常に広く深く、SF的な発想をそうした知識で裏書きしている点にあると思う。たとえば、物語の中核となる人口冬眠についても、証券会社が取り扱うことになっている。冬眠中、株式を委託された証券会社がもうけを得るシステムである。こうしたシステムを考える辺り、非常にハインラインらしい。『月は無慈悲な夜の女王』や『フライデイ』などではさらにその傾向を増している。

最近、Roomba(ルンバ)という「床掃除ロボット」が売られているけど、アレ作ったヤツは絶対『夏への扉』のファンだと思う。設計思想がそっくりだもん。

山下達郎がこのSFを元に「夏への扉」という歌を書いて歌っている。どっかのカラオケにこの歌が入ってるんだけど、カラオケの歌詞がしっちゃかめっちゃかなのには閉口。たしかに聞き書きでは絶対に分からない歌詞なんだけど、そういう時に歌詞カードくらいチェックしないのかな。

2004.06.19
※Solitairescope:『夏への扉』ロバート・A・ハインライン – livedoor Blog(ブログ)より転載。

2019-05-20 リンク先等修正

『夏への扉』ロバート・A・ハインライン

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