演劇の未来を彩る ―― 十色庵(toiroan) オープニングイベント #時間堂


私は、別に演劇人でもないし、役者だったこともない。幼稚園時代のクリスマス劇でキリストの父ヨセフ役(人形のキリストを主役とするなら準主役級)に大抜擢されたあのステージが私の演劇人生の頂点であった。

その後は、中学2年の時に担任に呼び出され、同級生と二人で演劇部の体験入学として稽古に参加させられた(友人はそのまま引きずり込まれていった)のを最後に、ステージから 赤方偏移しながら遠ざかっている。ああ、そう、同じ中学校2年の文化祭で、クラスの誰が言い出したのかビデオ映画を撮りたいということに決まり、脚本を書いた。3人で書くということになっていたが、前の2人を経て私の手元に届いたのは、まるで週刊の締切を落とした漫画家の原稿みたいな、A4ルースリーフ一枚の殴り書きだったので、ほとんどまるまる私が脚本を書いた。あれは脚本家に近づいた最後の瞬間だったかもしれない。

演劇経験とはいえない程度の演劇経験だが、数奇な縁により私の周りにはしばしば、演劇人が出現する。してみると「あなたは演劇に向いている」と言い張った中学校の担任の言葉も何か核心を突いていたのかもしれない——まぁただ新入部員を補充したかったんだとは思うが。

大学1年の時には、入学して最初の飲み会で仲良くなった3人のうち2人が演劇をやっていて大学祭のクラス演劇に巻き込まれ、いわゆる仕込みとバラシを含めて一週間くらい、授業をサボりながら、協力して下さっている小劇団の人たちと過ごした。

星を見上げるようにして照明の名前を覚えたり(ロマンチックではなかった)、劇場の天井裏を歩いたり(自分がどうしても高所作業になじまないことがわかった。バランス含めた身体能力に自信がないので、どうしても危険を感じてしまう)、あれは経験としては面白かった。今では残念ながら照明の名前もあらかた忘れてしまった。ただ山本正之「ライトマン」を聞いた時に懐かしく思う程度である。

■時間堂と十色庵

前置きが長くなったがという劇団がある。私はこっそり「考える劇団」と呼んでいる(もしかして失礼)。長らく王子を拠点にしていたけれど、赤羽にスタジオを獲得し、拠点とするという。王子でも十分近かったのだが、赤羽となれば、もうご近所。オープンイベントを開催しますということで堂主(主宰)の黒澤世莉氏からお誘いを頂戴したので行ってきた。

【時間堂スタジオ赤羽(仮称)オープニングイベント】開催のお知らせ
【時間堂スタジオ赤羽(仮称)】正式名称決定のおしらせ

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土日は都合がつかず、私が参加したのは2014-06-16(月)の夜。ちょっと遅れて到着したのだが、十色庵の前でスマートフォンを取り出し、おもむろにFoursquareのチェックインをする私……ふ、思った通りだ。たぶん私が最初。このまま行けばメイヤーも夢じゃない!(かもしれない)

中に入ると、世莉氏とプロデューサーと司会さんが対談をしているところだった。あらかた話が終わって、さて役者さん一人一人の抱負も聞いてみよう、というところ。印象に残ったキーワードだけ。

「ここで楽しくあそびたい」「投げ銭」「赤羽という立地になじみたい」「いつでも来られる場所にしたい」「即興演劇がうちの劇団員はみんなできるので(←役者失笑)お客様参加で即興演劇して、役者がなんとか着地させる、というのも面白いですね」「レパートリーシアター(2人芝居など、役者が揃えばすぐ上演できる芝居)を低価格で提供する」「客と役者の境界をなくしたい」「場所コストや仕込みバラシのコストが下げられる。技術職だけではなく、役者にギャラが支払われる環境にしたい」「子供と演劇が触れる場所」

ギャラの話題が出たところで、プロデューサーの意気込みとしては、「演劇を仕事にしたい」とのこと。 小劇団の現状としては「公演してチケット代で賄う」というモデルが普通で、トントンで回収できればいい方だとされる。演劇において重要な役割を果たすはずの役者が、一番支払われない現状に割り切れないものを感じている。

そういう現状を解消するモデルができないか。レパートリーシアターはそうしたモデルの一つになりうる。

時間堂はワークショップも手がけている。「仕事に役立つワークショップ」というようなことをできないか。

また、キッチンを使ったフード、ドリンク。アフター公演>居酒屋的なことをここでそのままやれるとみんなハッピーではないか。

演劇を軸に活動を広げていく。

商業演劇だけではなく、小さな空間で演劇をやる人たちも仕事になる。演劇人が正当な対価を得られるようにしたい。ライフイベントのたびに演劇続けるか否か悩むようなことにはしたくない。

法人化も検討したい。サークル、任意団体である劇団が法人化することで、世間からの見方も変わるし、自分たちの意識も変わる。

というようなことを語っておられた。

広さが実に手頃なので私も機会があったら訊こうと思っていたのだけれど、質疑応答の中で場所貸しも話題にのぼった。単純な場所貸しということはするつもりがなくて、場所を貸すにしても何かキュレーションをしたいというようなことだった。地方から劇団がツアーに来た時に使ってもらうなど。つまり、貸すにしても時間堂が提供する場としての価値を持たせたいということであろうか。

私も自分が参加しているエンタメチャリティ集団のことなど考えつつ、何か演劇に絡めたイベントが作れたら面白いなぁ……とか思っていた。演劇と謎解きイベントの合体超獣……そう、観客が謎を解く演劇!とか。

乾杯の後、パーティ。いつものようにパーティが苦手な私は(いつまでもそんなことを言ってたらいかんな、と思いながら)「この十色庵が演劇を仕事にする」ということについて考えていた。
そのときに思いついた質問を書き留めておく。

■十色庵での十の質問

Q. スタジオを手に入れた時間堂が次に欲しいものは何か?
Q. なぜ演劇はこんなに長い歴史を生き残っていながら収益性が低いのか?
Q. どうやったら十色庵で顧客単価1万円を実現できるのか。
Q. どうやったら十色庵で1時間で売上200万円を実現できるのか?
Q. 演劇の公益性とは何か、どうすればそれを最大化できるのか?
Q. 照明設備が自由自在である、という空間を最大限活用できるイベントは何か?
Q. を最大限活用できるイベントは何か? 白い壁を白くなく見せる方法は何か?
Q. 十色庵を1時間使って1000人から金をとれるイベントとは何か?
Q. 十色庵で演劇が上演されているのと同時に、同じ場所で別の方法で収益が上がるとしたら、それはいかなる魔法によるものか?
Q. 十色庵があらゆるメディアで話題になり一大センセーションを巻き起こしたとしたら、その記事には一体何が書かれているのか?

最初の質問だけは、帰り際、世莉さんが挨拶してくれた時に聞いてみた。

「スタジオを手に入れた今、欲しいものは?」と尋ねたところ、「僕には物欲はありませんから」と漢らしい発言でことわりを入れた後、「海外ツアーやりたいですね」とのこと。「そういえば、うちは劇団としての一眼レフ持ってないですから、一眼レフなら欲しいかな」……黒澤くん! それを物欲と言うのだよ!

ですので、一眼レフを時間堂に寄付したいという人は是非寄付したらいいよ。

演劇の未来を彩る、十色庵の幕開け。気軽に遊びに行ってもいい状況が整った頃、また遊びに行こうかな。

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